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法律コラム

こんにちは。世田谷用賀用賀法律事務所 代表弁護士の水谷です。
世の中で話題になっているニュースについて、法律に関わる部分で解説したいと思います。
日産系列の自動車ディーラーが委託先に無償で業務させていたとして、公正取引委員会は行政処分する方針を固めました。
関係者によりますと「日産東京販売」は車の整備を委託する際、委託先に車を無償で運搬させていました。
公正取引委員会はこれを下請法違反と認定し、再発防止と費用の支払いを求める勧告を出す方針を固めました。
今回はこちらを題材にして、弁護士の見解をお伝えしたいと思います。
2026年1月から「下請法」が大幅改正された
いわゆる「下請法」(下請代金支払遅延等防止法)は、従来から中小企業が大企業との取引において不当な扱いを受けないように、代金の支払遅延・買いたたき等を防ぐためのルールとして運用されてきました。
日産東京販売は2024年の夏以降、車の整備を委託した約20の業者に対し、2000台以上の車を無償で運搬させたと見られています。
日産東京販売は「調査を受けていることは事実で、全面的に協力する」とコメントしています。
公正取引委員会は、日産自動車に対し、下請法違反で再発防止を求める勧告を近く出す方針を固めたました。
日産東京は、2024年ころから、板金修理などを委託する車体整備事業者約25事業者に対し、事故車の運搬を無償でさせていたそうです。
故障車の修理を委託する際は、本来であれば委託元のディーラーが運搬にかかる費用を負担する必要がありますから、下請法の「利益提供要請の禁止」に違反したと見られます。(詳しくはこちら)
公取委と中小企業庁は、昨年から、自動車ディーラーと車体整備事業者の間の取り引きにおける下請法違反被疑行為の調査をすすめており、スズキ自動車とダイハツに対して、同様に勧告を実施したばかりです。
この「下請法」=「下請代金支払遅延等防止法」は、2026年1月から「中小受託取引適正化法」と改称され、内容も大きな改正がありました。
詳しくは政府広報オンラインのこちらの記事をご覧ください。
下請法改正の背景にあるものとは
近年、労務費や原材料費、エネルギーコストが急激に上昇しており、下請企業がコスト増分を下請代金へ転嫁できないケースが多発しています。このため、政府はサプライチェーン全体で価格転嫁が適正に行われる仕組みづくりを目的として、法律を抜本的に見直したものです。
① 法律名と用語の変更
従来の「下請法」という名称に代わり、
「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称:取適法)
となりました。
これは、法律の適用が単なる上下関係ではなく、委託取引全般に関わるものとして見直されたことを反映しています。
また、従来の「親事業者」「下請事業者」といった用語は、
- 委託事業者(発注企業)
- 中小受託事業者(委託を受ける中小企業)
へと変更されました。
② 適用範囲の拡大
これまで下請法は、資本金の額によって対象となる会社が限定されていましたが、改正後は資本金基準に加えて「従業員数」基準が新設されました。
これにより、資本金が小さい企業でも従業員数が多い場合には法律の対象となるケースがあり、適用対象となる企業が大幅に増えます。
製造委託等の場合:常時使用する従業員数300人/役務提供委託等の場合:100人。
さらに、従来対象外だった「運送委託」等の取引も新たに規制対象に加わったところが特徴です。
従来は、①製造委託、②修理委託、➂情報成果物作成委託、④役務提供委託のみが適用対象でしたが、適用対象に⑤「特定運送委託」が追加されました。
特定運送委託は、事業者が販売する物品や、製造や修理を請け負った物品などについて、その取引の相手方に対して運送する場合に、運送業務を他の事業者に委託する取引です。
無償で荷役・荷待ちをさせられている問題などを受け、取適法の対象に追加されたといわれています。
③ 発注側に新たな義務が増加
改正後は、発注側(委託事業者)に対して次のような義務が課されました。
- 価格の決定に当たっての協議義務
(発注側が一方的に価格を決めることが禁止されます)
- 支払条件の明示
- 支払期日を決めて書面で通知すること
これらにより、受注側(中小受託事業者)が不利益を被る可能性を低減しています
④ 禁止行為の拡充
改正では、従来の禁止行為に加えて次のような点が規定されました。
・ 単純な一方的価格決定の禁止
・ 手形払い等の禁止(現金支払が原則になりました)
これにより、売掛金回収までの長期化や不透明な支払い条件が是正されます。
⑤ 行政執行の強化
公正取引委員会や中小企業庁等の調査・指導権限が強化され、違反時の勧告・企業名公表などのペナルティがより厳格になりました。
企業が対応すべきこと
今回の改正は単なる名前変更ではなく、実務に直結する大きな変更です。
企業としては、
✔ 自社の取引が新たなルールの対象になるか確認
✔ 契約書や取引書類の見直し
✔ 支払条件の明確化
✔ 価格協議のプロセス整備
などの対応が必要です。
資本金の金額が大きくなくても、従業員が100~300人いれば下請法の規制を受けることになり、いわゆる中小の企業でも、コンプライアンス義務が生じることになります。
取引契約や書類の管理体制を早めに見直し、改正後のリスクを低減しておくことが重要です。
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