COLUMUN
法律コラム

代表弁護士の水谷です。
世の中で注目されている時事問題について、法律に関わる部分で解説したいと思います。
日本には、「無戸籍」、つまり、「戸籍のない人」がある一定数いると言われています。
(法務省が把握している数で約800人、実際には約1万人ぐらいいるという統計も)
今日はこの無国籍問題の実態について迫りたいと思います。
無国籍とは、どういう状態なのか
「戸籍」は、日本国民について、出生から死亡までの身分関係を示すものです。
戸籍が作れないと、日本人であることを示せなくなりますから、パスポート取得などにも問題が生じます。
しかし、「戸籍」がないだけであって「住民票」はあります。
「住民登録」はされているので、市町村からの住民サービスを受けることはできるのですが、「戸籍」への登録がないのです。
また、出生証明の制度をとらない日本においては、その誕生の事実(つまり、いつ、誰を母として生まれたか)を証明するものがないことになってしまいます。
なぜ無戸籍の方が増加するような事態になったのか
このうち多くの方は、「嫡出推定」の影響を受けていた、と言われています。(詳しくはNHKのニュース解説も)
これまで、「結婚時」あるいは「離婚後300日以内に生まれた子」については」、「当然」に夫(前の夫)との間の戸籍に入るものとされていました。
離婚後300日、つまり、離婚から妊娠期間10か月。離婚届が出るその日までは前の夫との性的関係がある可能性があることを前提としているなんて、おかしな規定です。
前の夫との戸籍に入れるのを避けるためには、夫に自ら「嫡出否認」をしてもらわなければならないのですが、これでは無用なトラブルを招くだけです。
というわけで、子が誕生しても敢えて戸籍上の届け出をしないケースが生じてきた…これが無戸籍の問題の実態なのです。
「嫡出推定」の影響について、民法改正の流れ
離婚後300日は前の夫の子と推定、という規定は、これまでは、女性の再婚禁止期間の規定とセットでした。
当然ながら、子どもを産まない男性に、再婚禁止の規定はありません。
離婚後300日もの間前の夫の子と推定するなんてそもそもどうかしていますが、DNA鑑定も手軽になった現在は、女性についてだけ再婚禁止を置く必要も、なくなりました。
そのため、再婚禁止や子の推定をめぐる規定は、次のように変化しています。
(平成28年6月まで)
女性の再婚禁止期間離婚から6ヶ月(民法733条1項)
離婚後300日以内に生まれた子は前の夫の子と推定(民法772条2、2項)
↓
(平成28年6月から)
女性の再婚禁止期間離婚から100日(民法733条1項)・・改正あり
離婚後300日以内に生まれた子は前の夫の子と推定(民法722条1、2項)・・・改正されず
↓
(令和6年4月から)
女性の再婚禁止期間廃止
離婚後300日以内に生まれた子の前の夫の子の推定の廃止(民法772条1、2項)
※ただし、原則として施行日に生まれた子について適用
このように、来年の4月からは、女性の再婚禁止の規定も、離婚後に生まれた子でも前の夫の子と推定する規定も、いずれもなくなります。
日本の民法は、令和2年4月に改正債権法が施行され、平成31年以降に改正相続法が施行されてなお、家族法分野はまだまだ時代にあった改正が追い付いてきませんでした。
その家族法分野が、来年の春にいよいよ改正されることになります。
またその頃に見解を書き記したいと思います。
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