COLUMUN
法律コラム

代表弁護士の水谷です。
世の中で取り沙汰されている時事問題について、法律に関わる部分で解説したいと思います。
今年起こった痛ましい殺人事件が複数ありました。
一つは6月末のこと、横浜市で「起きたら部屋に元カレがいた」と言って部屋を出たところで女性が殺されてしまった事件、もう一つは2月には、博多区の繁華街で女性が元交際相手に刺殺されてしまった事件です。
いずれも、いわゆる「ストーカー」が疑われる殺人事件でした。
実際に、博多区の事案では、ストーカー規制法に基づいて、被害者に近づいてはならないと警告する「警告」のみならず、接近したら懲役・罰金などを科する「禁止命令」が出ていたようです。
一方、横浜市の事案では、警察には相談がされていたものの、まだ警察から警告や禁止命令はなされていませんでした。
そもそも、どのような行為が「ストーカー」にあたるのでしょうか。
ストーカー行為ってどのような行為を指すのか
ストーカー行為とは、「恋愛感情」または「それが満たされなかったことに対する怨恨の感情」を充足する目的に出たものであることを要します。
冒頭の事件をはじめ、私たち弁護士のところに相談に来るものの多くが、後者です。
つまり「恋愛感情が満たされなかった(満たされなくなった)ことに対する怨恨(恨み)」に出たものであることが多いように思います。
そして、これにより取り締まられる「ストーカー行為」とは、
①つきまとい等の行為をすること
②位置情報を無承諾で取得すること
これらを反復継続して(繰り返して)することを言います。
「つきまとい」とはどのような行為を指すのか
具体的には、「つきまとい」とは、
ア)つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
イ)監視していると告げる行為
ウ)面会や交際の要求をすること
エ)乱暴な言動をすること
オ)無言電話をすること、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS・文書等を送ること
カ)汚物等を送付すること
キ)誹謗中傷などで、名誉を傷つけること
ク)卑猥な言動などで、性的しゅう恥心を侵害すること
いわゆる待ち伏せのような典型的なストーカーのイメージにあてはまる行為のみならず、「連続して電子メール等の送信」をすることもまた対象とされていることは、あまり知られていないことかもれません。
別れ話のもつれや喧嘩などで、ちょっとLINEが頻繁になることくらいは、どんなカップルにもよくあること。
でも、それが1日に数十通とか、百通とか、とんでもない件数になって、その内容も「今から行くぞ」とか「…じゃないとただじゃおかない」とか物騒なものになってくると、警察が動いてくれることもあります。
GPSの位置情報取得はどうなるのか
一方、「位置情報を無承諾で取得すること」は、被害者あるいはその家族など密接な関係にある人に対し、GPSなどでその居場所を追うこと、またGPS装置などを取り付けることをいいます。
これは、令和3年の法改正で加えられた条項です。
これにより、浮気調査などでGPSをつけることが、場合によっては違法になる余地も生まれたことになり、物議をかもしています。
次回はストーカーに対して、実際に警察に相談するケースについて解説いたします。
お困りごとは弁護士へ相談ください
- 「共同親権」(共同監護)のこと
- 養育費不払い問題、民法改正なるか?
- 面会交流「会わせたくない」「会わせてくれない」が錯綜する理由
- 弁護士が家事事件をあつかう、ということ
- 離婚時に父親が親権をとる、その理由とは
- 長引くコロナ禍、結婚式キャンセルに関する新たな業界指標が発表
- 子の父を決める「嫡出推定」の民法改正について。離婚弁護士がこれまでの矛盾を解説
- 140年ぶりの民法改正。弁護士が読み解く「18歳成人の春」はいかに
- 葬儀費用は誰が出すのか? 遺産から負担できるのか
- 「不倫」と社会的・法的責任について。「既婚男性との間で妊娠」で社長辞任…の衝撃
- 「テラスハウス」の事案にみる、名誉棄損と侮辱について
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題
- W(ダブル)不倫は珍しくない?! 身の回りで起こってしまった時、慰謝料請求で注意すべき点とは
- 知っているようで知らない「ストーカー規制法」について
- 「ストーカー規制法」警察に動いてもらうためにも、弁護士に相談したほうがいい理由
- 逆転勝訴から考える、「性自認」と「性的指向」の話
- 東京家裁、福原愛さんの「子の引き渡し」審判から読み解く「共同親権」について
- ビッグモーター社事件で感じる違和感と、刑事・民事の責任の所在とは
- 日大アメフト部の薬物事件をめぐって、法律家の見解
- ハル・ベリーの離婚がから考える、双方が平等に監護する「交代監護」とは
- 「共同親権」導入に向けて、法制審議会にて一歩前進
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題・続編
- 日本での「無戸籍問題」をめぐって
- ジャニーズ「社名変更」なるも、法人格は「そのまま」という事情
- 「性同一性障害」の手術要件で、最高裁の下した判決について
- 「面会交流アプリ」利用について、離婚弁護士が思うこと
- 芸能人のスキャンダルと週刊誌報道、「名誉毀損」について
- 共同親権、国会への法案提出見込み
- サッカー日本代表選手の性加害疑惑について、法律家の思うところ
- 「共同親権」の導入、民法改正案を閣議決定か
- 福原愛さん、子どもの監護「共同親権」で和解か
- 2024年4月1日から義務化された「合理的配慮」とは。具体的事例を交えて法律解説
- 共同親権を認める民法改正案が、参院で審議入り
- 「2024年問題」で運送業界はどうなる?事業者側の対応策について
- ついに「共同親権」法案公布。施行は2026年5月までに
- 同性婚のカップルの子の親子関係を認めた初判決について
- 役員の退職金と退職金支給規程について〜宮崎テレビ最高裁判例〜
- 松本さんの名誉棄損訴訟、取り下げに。弁護士による見解解説
- 中居さんスキャンダルからみる「日弁連ガイドライン」の「第三者委員会」とは
- 中居氏とフジテレビ問題、第三者委員会報告書と守秘義務解除について
- 共同親権導入まであと1年。親権者の決定は「監護の実績」の有無で決まる
- 2025年
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
ご予約・お問い合わせ・オンライン相談
「事業や人生に寄り添った仕事がしたい」
そんな熱い思いを胸に全力を尽くして
取り組んでおります。
まずはお気軽にご相談くださいませ。