COLUMUN
法律コラム

代表弁護士の水谷です。
「弁護士と読む時事ニュース、ホントのところ」というテーマで、世の中で注目されている時事問題について、法律に関わる部分の解説をしたいと思います。
今回は長引くフジテレビ問題を取り上げます。
2025年3月31日、フジテレビから第三者委員会の調査報告書が公表されました(調査報告書はこちら)。
別冊を含めると350頁近くにもなる、とてつもない長編でした。
これだけ長編になったのは、単に一般的な事実関係や委員会の見解だけでなく、中居さんと女性との間の出来事について、前後、関係者を含め細部のやりとりが具に記載されていたことにもよります。
今回は第三者委員会報告書と「守秘義務解除」について解説いたします。
TV局関係者と中居さんとのやりとりの開示について、違法性はないのか
第三者委員会の調査に対してとはいえ、プロデューサーと中居さんとのSNSと思われるメッセージのやりとりそのものまでをも抜粋した詳細な聞き取りに驚きました。
これらは、いずれもテレビ局関係者から開示されたもののようで、当然、中居さんから積極的な同意はなかったことが予想されます。
中居さんは、テレビ局関係者に経緯を明らかにされることに文句は言えないのでしょうか。
もちろん、今回のことでいえば、中居さんがNOと言える立場にはないかもしれません。
しかしながら、個人間のやりとりを第三者に話すことは、本質的にはそれが本当のことであってもプライバシー侵害に当たります。
とはいえ、今回は第三者委員会からの調査であったので、違法性が阻却され、中居さんはこれについて文句を言うことはできないことになります。
女性と中居さんのやりとり、示談内容を除いて明らかに
女性との当日前後の経緯については、女性が中居さんと二人きりになってから何がおきたのか、という点と、示談内容を除いては、同様に時系列が明らかになっていました。
これは、同様に、おそらく女性側が積極的に開示したものと思われます。
実際に部屋の中で何があったの?どんな示談をしたの?という点が最も一般の人の知りたいところだと思いますが、そのところだけは記載がありません。
この点、第三者委員会の報告書によれば、「当委員会が双方の代理人弁護士と協議した結果、2023年6月2日に女性Aが中居氏のマンションの部屋に入ってから退室するまでの事実」及び「示談契約の内容」が守秘義務の対象事実であることを特定し、この部分以外については双方が当委員会のヒアリングに応じることを確認した」とあります。
「守秘義務の対象事実であることを特定」の記載から読み取れること
「守秘義務の対象事実であることを特定」ってなんだかおかしな記載ですね。
なぜすでに成立した守秘義務契約なのに、改めて内容を確認しているの?と疑問に思われる方もあるかもしれません。
実際の示談書では「示談に至る一切の事情」と「示談の内容」が守秘義務の対象だったのだと思います。
それが、損害賠償の和解では一般的な内容だと思います。
そうだとすると、一説によれば9000万円もの金銭を受け渡して和解したのだから、本来は一連の事実を第三者委員会にも互いに話してはいけません。
でも、第三者委員会の調査に対して、フジ関係者が話しているのに、ここだけ当事者が隠したらさらなる批判にさらされます。
そこで、この核心となる2つの部分以外については、中居さんも開示OKにしたのでしょう。
「守秘義務の解除」が意味することとは
核心となる2つの点についても、女性は開示してもいいと言ったのに、中居さんはNO。
示談金が取り交わされていることもあり、さすがにこの部分については女性も開示しないことにしたのでしょう。
それが「2023年6月2日に女性Aが中居氏のマンションの部屋に入ってから退室するまでの事実」及び「示談契約の内容」が守秘義務の対象事実であることを特定”の意味であると思います。
ニュースでは中居氏は「守秘義務の解除」に応じず、女性は応じたということが取りざたされていますが、それはこのような経緯によるものであったと思われます。
一般民事の現場から、「口外禁止条項」とは
一般に、不貞行為・不当解雇・名誉棄損といった一般民事案件で、一方が一方にお金を支払って和解する場合において
「当事者は、正当な理由がない限り、和解に至った一連の経緯及び和解の事実・内容を第三者に口外、一般に公開しない」
という文言が設けられることがとても多いです。
これは、一般の人に知られたら困るというプライバシーの観点もありますが、お金を払う側にとっては、一定額を払うのだからその対価として秘密裡を保ってほしいというニーズがあることもあります。
とはいえ、単なるお約束で、人の行動を縛れるわけではないのですから、一方が約束に違反してその後外部に漏らすを「絶対に」防ぐことはできません。
もし「示談」した内容を口外したらどうなる?
では、万が一これに違反して、示談したのにむやみに口外してしまったら?
契約違反ですから、債務不履行として新たな損害賠償問題となります。
今回の件では、たとえ第三者委員会の調査といえども、女性の側も中居さん側と目線を合わせることなく事実の開示はしなかったのだと思います。
取り交わされた金額の大きさ、事案の重大性を考慮すれば、それが当然のこといえるでしょう。
お困りごとは弁護士へ相談ください
弊所では弁護士事務所には珍しい、オンライン予約システムを導入しております。
サロン予約のように、ご希望の相談メニューとご都合の良いお時間帯をお選びいただけると好評です。
こちらのページにあります「ご予約・お問い合わせはこちら」よりご予約ください。
もちろん、お電話でもご予約承っております。お電話での弁護士へのご相談は…℡03-3709-6605
法律的な見解はもちろんですが、さらにその一歩、相談者さまの人生に寄り添った形でお話させていただいております。
ご相談がありましたら、お気軽に当事務所までご連絡ください。
- 「共同親権」(共同監護)のこと
- 養育費不払い問題、民法改正なるか?
- 面会交流「会わせたくない」「会わせてくれない」が錯綜する理由
- 弁護士が家事事件をあつかう、ということ
- 離婚時に父親が親権をとる、その理由とは
- 長引くコロナ禍、結婚式キャンセルに関する新たな業界指標が発表
- 子の父を決める「嫡出推定」の民法改正について。離婚弁護士がこれまでの矛盾を解説
- 140年ぶりの民法改正。弁護士が読み解く「18歳成人の春」はいかに
- 葬儀費用は誰が出すのか? 遺産から負担できるのか
- 「不倫」と社会的・法的責任について。「既婚男性との間で妊娠」で社長辞任…の衝撃
- 「テラスハウス」の事案にみる、名誉棄損と侮辱について
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題
- W(ダブル)不倫は珍しくない?! 身の回りで起こってしまった時、慰謝料請求で注意すべき点とは
- 知っているようで知らない「ストーカー規制法」について
- 「ストーカー規制法」警察に動いてもらうためにも、弁護士に相談したほうがいい理由
- 逆転勝訴から考える、「性自認」と「性的指向」の話
- 東京家裁、福原愛さんの「子の引き渡し」審判から読み解く「共同親権」について
- ビッグモーター社事件で感じる違和感と、刑事・民事の責任の所在とは
- 日大アメフト部の薬物事件をめぐって、法律家の見解
- ハル・ベリーの離婚がから考える、双方が平等に監護する「交代監護」とは
- 「共同親権」導入に向けて、法制審議会にて一歩前進
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題・続編
- 日本での「無戸籍問題」をめぐって
- ジャニーズ「社名変更」なるも、法人格は「そのまま」という事情
- 「性同一性障害」の手術要件で、最高裁の下した判決について
- 「面会交流アプリ」利用について、離婚弁護士が思うこと
- 芸能人のスキャンダルと週刊誌報道、「名誉毀損」について
- 共同親権、国会への法案提出見込み
- サッカー日本代表選手の性加害疑惑について、法律家の思うところ
- 「共同親権」の導入、民法改正案を閣議決定か
- 福原愛さん、子どもの監護「共同親権」で和解か
- 2024年4月1日から義務化された「合理的配慮」とは。具体的事例を交えて法律解説
- 共同親権を認める民法改正案が、参院で審議入り
- 「2024年問題」で運送業界はどうなる?事業者側の対応策について
- ついに「共同親権」法案公布。施行は2026年5月までに
- 同性婚のカップルの子の親子関係を認めた初判決について
- 役員の退職金と退職金支給規程について〜宮崎テレビ最高裁判例〜
- 松本さんの名誉棄損訴訟、取り下げに。弁護士による見解解説
- 中居さんスキャンダルからみる「日弁連ガイドライン」の「第三者委員会」とは
- 中居氏とフジテレビ問題、第三者委員会報告書と守秘義務解除について
- 共同親権導入まであと1年。親権者の決定は「監護の実績」の有無で決まる
- 2025年
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
ご予約・お問い合わせ・オンライン相談
「事業や人生に寄り添った仕事がしたい」
そんな熱い思いを胸に全力を尽くして
取り組んでおります。
まずはお気軽にご相談くださいませ。