弁護士と読む時事ニュース 「将来」に向けた「協議離婚書」は有効なのか | 法律コラム | 弁護士法人 世田谷用賀法律事務所

 

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2025.09.25 | Vol.302

弁護士と読む時事ニュース
「将来」に向けた「協議離婚書」は有効なのか

【代表コラム】

こんにちは。代表弁護士の水谷です。


来年から共同親権法制が導入されることも相まって、最近、「来年末に離婚することを合意する」といった」ような、将来に向けた離婚協議書を作りたい、といったご相談が、俄かに増えてきたように思います。


このニュースについて弁護士としての見解をお伝えしたいと思います。

 

将来の離婚を約した協議書の効力は?

実は、「将来離婚することの合意」をしたいというご相談は、それなりに多くあります。


しかしながら、「将来離婚することの合意書」を作成しても、実はこれは「無効」です。


というのも、日本の離婚制度では、夫婦が合意し、役所に離婚届を提出することで「協議離婚」が成立するのですが(民法764条)


・離婚の効力が生じるのは離婚届を提出した時点 であり、

・届出時に双方の離婚意思が存在していることが必要です。

 

そのため、あれだけ事前に「離婚する」と書面で合意していても、届出時点でどちらかが意思を撤回すれば、離婚は成立しませんから、予め合意しても、それ自体は意味をもたないのです。

 

したがって、「○年○月に離婚する」といった約束を書面にしても、それ自体で離婚が成立するわけではありません。


事前の合意をしていても、協議書に基づき離婚届を強制することはできません。

 

財産分与を事前に決めておくことはできる?

「離婚した場合には財産をこう分ける」と婚姻中に取り決めた合意書は有効でしょうか。


民法768条は、離婚に際して財産分与を定めています。


ただし、財産分与請求権は離婚が成立して初めて発生します。


したがって、離婚前に作成した合意書は「離婚成立後に効力を持つ約束」として位置づけられます。

 

本来、民法756条により、夫婦の財産帰属に関する契約は、婚姻までに約束しないと、夫婦共同財産制度とは異なる契約はできないとされています(いわゆる「プレナップ」)。

 

そして、民法754条により、夫婦間でした契約は、いつでも取り消せるとされていますから、これだけ見ると、離婚を前提としての財産分与の約束も同様に思えます。

 

(夫婦間の契約の取消権)

第754条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

一方、夫婦関係が実質的に破綻しているときは、民法の条文による取り消しは認められず、内容が妥当である限り契約が有効であるとした最高裁判例があります。


これにより、離婚協議をするなかでの予めの財産分与の約束は、離婚が成立したときには、有効に効力を持つことになります。

 

法律相談の現場から

「当事者が作った離婚協議書は有効ですか」という質問をいただくことは多くありますが、離婚協議書はご当事者間で作成しても、もちろん、内容が妥当である限り有効です。


とはいえ、基本的な民法の考え方に外れた協議書は、いざというとき無効になることも。


ご不安なときは、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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