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法律コラム

養育費不払という社会問題
1月15日、上川法相が「離婚に伴う子の養育のあり方に関する法制度の見直し」を2月の法制審議会に諮問することを明らかにしました。(日経新聞参考記事:養育費不払い解消を諮問へ法制審、共同親権も議論)
その骨子となっているのが、養育費の不払い問題の解消施策です。
法務省は、年内から「養育費不払解消に向けた検討会議」を開催し、この問題に取り組んできました。
離婚時に養育費の取り決めをしたひとり親世帯は、母子世帯で42.9%にとどまり、養育費を受けているのが母子世帯のたった24.3%。このコロナ禍においても、母子世帯の貧困が、社会問題とされてきました。
当事務所においても、「最初は支払われていたけれど、止まってしまった」「減らされてしまった」といったご相談は間断なくあります。
現在の「養育費取り立て制度」とは
現行法だと、離婚のときに①協議離婚なら公正証書を作成するか②調停離婚・裁判離婚にすることにより、養育費の取決めに強制力を持たせることができます。
「強制力をもたせる」とは、「不払いのときに相手の財産を差し押さえして支払わせることができる」ということ。
相手方の預貯金と勤務先がわかっていれば、未払いの分について預貯金から、今後の支払について勤務先の給与債権を差し押さえて支払わせることができます。
ただし、相手に「預貯金が何銀行の何支店にあるのか」ということがわからないと、せっかく公正証書や調停調書ができていても、実際に差し押さえることができなくなります。
この差押の手続きですが、意外と煩雑で大変なので、我々法律事務所にご相談・ご依頼される方も多いです。
実際、「養育費を取り決めたが止まってしまった」「そもそも相手の住所もわからないし、財産のありかもわからない…」こういったご相談は多く寄せられています。一方で、人によっては、相手の所在を確かめるために、探偵業者を雇う方までいます。
法改正の方向性は、いかに?
養育費不払の解消のための今後の施策は次のとおりです。
①離婚時に養育費の取決めを義務付ける。
②取り決めた養育費が不払いとなったときにの取り立ての方法を充実させる。具体的には、
●現在の強制執行制度で、相手方の住所や財産を把握する負担を軽減する。
●強制執行ではなく、公的機関が代わって(税金のように)徴収する強制徴収制度を設ける。
といったものが考えられます。
さらに、民間のサービスによるサービサー(債権回収会社)や保証制度も導入が検討されているといわれます。
また、養育費不払の場合の一部の行政から公的給付の拡充が検討(すでに一部導入している自治体あり)されています。特に、現在の強制執行制度においても、相手方の住所や財産を把握する負担が軽減されれば、取り立ての実効性は格段に増すはずです。
共同親権と養育費履行確保の深い関係性
注目すべきは、今話題とされている「共同親権」の問題が、養育費の支払い確保と絡めてされていること。
(共同親権についてはこちらの記事でもご紹介しています)
現在の「単独親権制度」の元では、一方の親にしか親権がゆかない状態のため、親権者でない親からは「親権をもらえないなら支払えないし、支払いたくない」という意見があるので、「養育費の不払いが進んでいるのではないか?」「共同親権になったら、両方の親に権利と責任があるから、養育費の支払いを義務だと感じやすくなるのではないか?」というのです。
たしかに、私たち弁護士が離婚相談を受ける中でも、
「子どものことは大好きで、なんでもしてやりたいと思っていますが、子どもを引き取れない(親権がない)なら、何にも支払いたくない」という方がいらっしゃるのは事実。
ただ、こういった方はごく一部。社会の潮流として、父母双方に親権を残せば、子と暮らしていない方の親もちゃんと責任を感じて養育費を必ず支払うようになるのかは…、正直、疑問です。
共同親権の議論は、親の権利と義務を両方に持たせようとする発想からきているもの。
その背景には「女性の社会進出をさらに促進し、経済全体を盛り立てていこう」という施策も見え隠れするようです。
養育費や離婚について、お気軽にご相談ください
とは言え、「養育費支払い確保」が法制度となるのは、今しばらく先でしょう。
現行法のもとで、養育費を円滑にきちんと決めること、一度決めたのに支払われなくなってしまったときに、強制執行(預貯金や給与の差押)の手続をすることなど、現行法のもとでもできることについては、引き続き、経験に基づき適切なアドバイスをいたします。
養育費にお困りの方、ぜひお気軽にご相談ください。
弊所では、引き続き衛生面に配慮した来所面談とともに、オンラインでZOOMによる面談のオプションをご案内していますので、ぜひお気軽にお問合せください。
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