COLUMUN
法律コラム

代表弁護士の水谷です。
世の中で注目されている時事問題について、法律に関わる部分で解説したいと思います。
先月、神戸市中央区のマンションで女性が殺害されました(参考資料:読売新聞)。
加害者とされる男性は、数年前にも同市内の女性に付きまとったり、女性の自宅マンション付近をうろつくなどしたとして逮捕され、後に罰金の略式命令を受けたといいます。
ストーカーの末に女性が殺害される惨劇は、昨年12月、川崎市でも同様の事件があったばかりです。
このニュースについて弁護士としての見解をお伝えしたいと思います。
川崎ストーカー事件検証報告書
川崎の事案については過去に記事にさせていただきました(過去記事はこちら)。
神奈川県警が、事件から半年強がたった9月4日、「神奈川県川崎市内におけるストーカー事案等に 関する警察の対応についての検証結果等報告書」を出しました。
警察がこのような報告書を一般に発信するのは異例といっても過言ではありません。
被害者が最初に警察に相談してからつきまといが本格化するまで、被害者の失踪、親族からの申告といった一連の時系列がつぶさに記されています。
そして、その中では、地域の警察官から生活安全課、相談を受けていた生活安全課から刑事課への連携が不足していた、ということが結論づけられています。
男女の事案については、ただちに刑事事件化するわけでないこともあり、当初は交番のレベル、警察署の生活安全課のレベルで対応がされることがほとんどです。
川崎の事案では、捜査をし、加害者の逮捕に踏み切る権限をもつ刑事課との連携がうまくはかられなかったことが原因です。
ストーカー規制法、被害者の申告不要に
川崎、神戸と続いた痛ましい事件を受け、同じくこの9月、ストーカー規制法について、加害者への「警告」に被害者からの申し出を必要とせず、警察の職権でただちに「警告」ができるようにする改正が検討されていることが発表されました(参考資料:読売新聞)。
ストーカー規制法は、「被害者の申告」→警察からの「警告」(やめるように促す)→「禁止命令」(拘束力を持って、つきまといを禁止する)→それに違反したら懲役・罰金の刑罰、というステップを踏むことを基本としています。
法改正で「警告」のステップを経ないで「禁止命令」が出せるようになっていますが、いずれにしても被害者の申告を待ち、証拠の収集を前提とするため、迅速性に欠けることが問題視されてきました。
川崎の事案の報告書でも、昨年11月から12月の間に、被害者からの電話相談を受けながら、その間に被害者と加害者から「復縁」の申立てがあったことから、それにより警察が手をこまねいた可能性があることが記されています。
法律相談の現場から
被害者は加害者に対して恐怖心を抱くあまり、警察に申告したら恨まれてしまうかもしれない、という気持ちを持つことが多くあります。
弊所のような法律事務所でも、別れ話のもつれから、男女の一方が執拗に他方に連絡をしたり、自宅を訪ねたりするようになり、困り果ててご相談にいらっしゃる方に多く接します。
皆さん一様に「警察や弁護士に介入してほしい。でも、恨まれて逆上されたらどうしよう」とおっしゃいます。
そうでなくても「警察が絡んだらかわいそうだ」というものも。
これまでの主従の関係で、考え方の癖がついてしまっているケースもあります。
今回のストーカー規制法の法改正案は、痛ましいニュースが続いたことを受けてのものなだけでなく、男女の事案でのこのような特性を見据えたものだと思われます。
いつ導入されるか、導入されたとして実際に警察が被害者の意思と離れて警告に踏み切ることができるのか、その動向が気になるところです。
お困りごとは弊所・弁護士へ相談ください
弊所では弁護士事務所には珍しい、オンライン予約システムを導入しております。
サロン予約のように、ご希望の相談メニューとご都合の良いお時間帯をお選びいただけると好評です。
こちらのページにあります「ご予約・お問い合わせはこちら」よりご予約ください。
もちろん、お電話でもご予約承っております。お電話での弁護士へのご相談は…℡03-3709-6605
法律的な見解はもちろんですが、さらにその一歩、相談者さまの人生に寄り添った形でお話させていただいております。ご相談がありましたら、お気軽に当事務所までご連絡ください。
- LINEとYahoo! の経営統合 はどのように行われた?
- ビッグモーター社の会社再建について
- 「食べログ」敗訴から勝訴へ。デジタルプラットフォームに対する考え方
- スタートアップ業界注目のデジタルヘルス「SaMD」の現状と課題について
- 相続登記の義務化により、これまでと何がどう変わるのか
- 会社を閉じる際、経営者が「個人破産」せずに済む方法
- 企業とコンプライアンスを守る~下請法規制とは~トヨタ子会社の例
- 「都市農地貸借円滑化法」施行後の現状の課題とは
- 中小企業における事業承継と経営者保証の現状
- 株主代表訴訟とは?小林製薬への提訴準備を巡る問題を考察
- 「串カツ田中」の上手な事業承継について
- 弁護士と読む時事ニュース 広陵高校の暴力事件から見る、責任の所在とは
- 弁護士と読む時事ニュース ストーカー規制法改正と川崎の報告書について
- 弁護士と読む時事ニュース 「将来」に向けた「協議離婚書」は有効なのか
- 弁護士と読む時事ニュース 「法律の間隙(すきま)」をつく犯罪について
- 【前橋市長のホテル密会問題】一般の社内不倫で、懲戒できるのか
- 「共同親権」(共同監護)のこと
- 養育費不払い問題、民法改正なるか?
- 面会交流「会わせたくない」「会わせてくれない」が錯綜する理由
- 弁護士が家事事件をあつかう、ということ
- 離婚時に父親が親権をとる、その理由とは
- 長引くコロナ禍、結婚式キャンセルに関する新たな業界指標が発表
- 子の父を決める「嫡出推定」の民法改正について。離婚弁護士がこれまでの矛盾を解説
- 140年ぶりの民法改正。弁護士が読み解く「18歳成人の春」はいかに
- 葬儀費用は誰が出すのか? 遺産から負担できるのか
- 「不倫」と社会的・法的責任について。「既婚男性との間で妊娠」で社長辞任…の衝撃
- 「テラスハウス」の事案にみる、名誉棄損と侮辱について
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題
- W(ダブル)不倫は珍しくない?! 身の回りで起こってしまった時、慰謝料請求で注意すべき点とは
- 知っているようで知らない「ストーカー規制法」について
- 「ストーカー規制法」警察に動いてもらうためにも、弁護士に相談したほうがいい理由
- 逆転勝訴から考える、「性自認」と「性的指向」の話
- 東京家裁、福原愛さんの「子の引き渡し」審判から読み解く「共同親権」について
- ビッグモーター社事件で感じる違和感と、刑事・民事の責任の所在とは
- 日大アメフト部の薬物事件をめぐって、法律家の見解
- ハル・ベリーの離婚がから考える、双方が平等に監護する「交代監護」とは
- 「共同親権」導入に向けて、法制審議会にて一歩前進
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題・続編
- 日本での「無戸籍問題」をめぐって
- ジャニーズ「社名変更」なるも、法人格は「そのまま」という事情
- 「性同一性障害」の手術要件で、最高裁の下した判決について
- 「面会交流アプリ」利用について、離婚弁護士が思うこと
- 芸能人のスキャンダルと週刊誌報道、「名誉毀損」について
- 共同親権、国会への法案提出見込み
- サッカー日本代表選手の性加害疑惑について、法律家の思うところ
- 「共同親権」の導入、民法改正案を閣議決定か
- 福原愛さん、子どもの監護「共同親権」で和解か
- 2024年4月1日から義務化された「合理的配慮」とは。具体的事例を交えて法律解説
- 共同親権を認める民法改正案が、参院で審議入り
- 「2024年問題」で運送業界はどうなる?事業者側の対応策について
- ついに「共同親権」法案公布。施行は2026年5月までに
- 同性婚のカップルの子の親子関係を認めた初判決について
- 役員の退職金と退職金支給規程について〜宮崎テレビ最高裁判例〜
- 松本さんの名誉棄損訴訟、取り下げに。弁護士による見解解説
- 中居さんスキャンダルからみる「日弁連ガイドライン」の「第三者委員会」とは
- 中居氏とフジテレビ問題、第三者委員会報告書と守秘義務解除について
- 共同親権導入まであと1年。親権者の決定は「監護の実績」の有無で決まる
- 弁護士と読む時事ニュース 「川崎ストーカー被害殺害事件」について
- 問い合わせの多い「カサンドラ症候群×離婚相談」、その後と弁護士的見解
- 弁護士と読む時事ニュース 「東京電力、株主代表訴訟控訴審」での逆転判決
- 民法改正報道から1年を切った今、「共同親権」の現在地
- コロナ給付金「無店舗型の性風俗業」対象外・合憲判決について
- 弁護士と読む時事ニュース 広陵高校の暴力事件から見る、責任の所在とは
- 弁護士と読む時事ニュース ストーカー規制法改正と川崎の報告書について
- 弁護士と読む時事ニュース 「将来」に向けた「協議離婚書」は有効なのか
- 弁護士と読む時事ニュース 「法律の間隙(すきま)」をつく犯罪について
- 「離婚前提」と聞かされ慰謝料150万円を払ったのに復縁…返還されるのか
- 【前橋市長のホテル密会問題】一般の社内不倫で、懲戒できるのか
- 2025年
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
ご予約・お問い合わせ・オンライン相談
「事業や人生に寄り添った仕事がしたい」
そんな熱い思いを胸に全力を尽くして
取り組んでおります。
まずはお気軽にご相談くださいませ。




