COLUMUN
法律コラム

代表弁護士の水谷です。
世の中で注目されている時事問題について、法律に関わる部分で解説したいと思います。
川崎市で、20歳の女性がストーカー被害で殺害されるという痛ましい事件が起こりました。
ストーカーによる凄惨な事件は、数年に一度は報道を目にするところでもあります。
なぜこのような痛ましい事件が繰り返されてしまうのでしょうか。
ストーカー被害の相談を受ける弁護士の視点から、この事件を問題点を振り返ってみます。
まずは時系列で事件の整理を
報道によれば、
昨年6月
交際中の暴力として被害者女性が警察相談
昨年9月
暴力について被害女性の父が被害届提出
ただしその後取り下げ
昨年12月
被害女性から自宅近くをうろついていることについて警察に電話相談
同月中、女性が行方不明に
今年4月
ストーカー規制法容疑で自宅を捜索 被害女性を発見
他にもさまざまな情報があるはずなので、これだけで全てのことがわかるわけではないのですが、女性がいなくなってから4か月以上がたってから初めて自宅の捜索…というところが「遅いなあ」という印象は、誰しもが持ったはずです。
遅くなった理由①
「ストーカー規制法」自体の “ステップの多さ”
では、なぜ警察の対応が遅くなったのでしょうか。
理由の一つは、ストーカー規制法が「警告」「禁止命令」「逮捕」の3ステップを踏んでいるからです。
被害者から被害の申し出があった場合、ストーカー規制法に基づき、警察はまず、「警告」(「更に反復して当該行為をしてはならない旨」の警告(4条))を出すものとされます。通常、これは電話で行われます。
そして、この警告に反してストーカー行為が繰り返された時、被害者申告があるかないかに関わらず「禁止命令」(「更に反復して当該行為をしてはならないこと」(5条))の書面による通知がされます。
実際に刑事犯罪とし逮捕令状の取得に動くのは、この「警告」→「禁止命令」2ステップの後です。
法律上は「このステップを踏まないといけない」とは記載されていないので、即逮捕でもいいのです。
しかし、ストーカー行為の動機は恋愛感情の場合が多いので、事案の軽重を見極めるためか、このステップが踏まれていること多いです。
遅くなった理由②
ストーカー行為としての認める際の “要件の複雑さ”
ストーカー規制法による「つきまとい行為」には、①主観面(内心面)で、「恋愛感情」または、「好意の感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情」のいずれかを充足する目的があることが必要です。
その上で、②付きまとい・待ち伏せ行為のほか、無言電話や繰り返しての電話・メール行為の類型が定められています。
さらに、③これが刑事犯罪として「ストーカー行為」となるためには、“身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合”に限る、とされています。
特に①の内心の目的がどうか。
③の方法として「…著しく害される不安を覚えさせる」と言えるかどうかで、被害届を警察に受理してもらえるハードルが高くなってしまうのです。
遅くなった理由③
被害者の気持ちを考慮する中での “判断の難しさ”
ストーカー行為の相談先は警察だけじゃない。早めに法律相談を
警察に被害の相談をする際、同じ被害であっても、正確に、かつ効率的に状況を理解してもらわないと、警察の対応は異なります。
被害の状況を時系列でまとめ、LINEの履歴を出力して持参する、つきまとわれた時の写真をまとめるなどの努力は必要です。
弁護士に早い段階で相談をしていただけたら、どんなものを持参するとよいか、アドバイスもできますが、混乱して警察に駆け込んだだけでは、なかなかうまく取り合ってもらえない場合もあります。
ストーカー行為に関しては、婚姻関係や内縁に近い場合には、刑事上の手段だけでなく、いわゆるDV防止法(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)に基づく民事上の保護命令制度(接近禁止を命じてもらう制度)もあります。
また、被害についても、各自治体が「犯罪被害者等基本法」に基づいて「犯罪被害者支援条例」を整備しており、法律相談の費用や転居の費用などを負担してもらえる場合があります。
単に警察に相談するだけではなく、適切なタイミングで、法律相談を受けていただき、どんな手段があるのかを知った上で判断することをおすすめします。
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