COLUMUN
法律コラム

代表弁護士の水谷です。
世の中で取り沙汰されている時事問題について、法律に関わる部分で解説したいと思います。
ビッグモータ―社の不正な保険金請求事件が巷を騒がせています。
今日、同社の店舗前を通りかかりましたが、スタッフの方がお一人いるだけで、店舗内にはお客様は誰もいない様子でした。
スタッフの方はどんな思いで店舗にいらっしゃるのかなと思うと、複雑な思いでなりません。
刑事的、民事的な責任はどこにあるのか
この件、当初発覚したのは、2021年秋に損保団体に対して同社で勤務する方と思われる方からの内部告発があったことが契機だったようです。
2022年8月には、岐阜地裁にパワーハラスメントでうつ病を発症した元店長が、慰謝料や残業代について支払いを求める訴訟を提起したことがわかっています。
今回、その訴訟の経過が公開されたことも、メディアに本件が伝わる一因であったかもしれません。
ゴルフクラブで車両を傷つけたという行為は、刑法上、器物損壊罪になります。
本当は故意による行為であって保険金の請求はできないのに、これを隠して保険金を請求して、(修理代という)保険金を受領することは、刑法上詐欺罪にもなります。
当然、民事上も、それぞれについて損害賠償責任が発生します。
責任を問われるのは誰か。経営陣の責任は?
しかし、これらの責任を負うのは、本当にそれをした社員さんたちなのでしょうか。
重圧下でやらされていただけだとしたら、経営陣の責任は問われないのでしょうか。
刑法上は、違法な行為を指示した者は「教唆」犯となることはご存じだと思います。
仮に「ゴルフクラブで車両を傷つける」という行為に加わっていなくても、そのことを社員に指示して、意思を通じて加わっていれば、「共犯(共同正犯)」が成立する余地も十分にあります。
民事的にも、実際に損壊行為をした従業員だけではなく、雇用していた人に対する民法上の「使用者責任」、また、会社の経営幹部にも、会社法上の「取締役に対する損害賠償責任」が発生することになっています。
社員さんたちがパワハラを含めた劣悪な環境で仕事をしていたことは、岐阜地裁のニュース報道を通じて次第に明るみになっています。
社員さんたちが、重圧下で違法な行為を「せざるを得なくなっていた」のだとして、指示した人、経営陣だけではなく、実際に行為に及ばざるを得なかった人たちまでもが刑事的、民事的に責任を負うことになるのか?
そしてその場合の法律構成については、今後注目されるところだと思います。
「ゴルフを愛する人への冒涜」発言
一連のパワハラ疑惑については、会社のどの階層がどのような程度で関与していたのか、は、まだ真相は明らかではありません。
しかしながら、先月中に辞任した兼重社長がゴルフクラブ(を靴下でくるんだもの)で車両を損壊した行為について、「ゴルフを愛する者への冒涜」と発言したのは、私にはとても印象的でした。
器物損壊罪は「ゴルフクラブ」(の所有者)ではなく「車両」(の所有者)に対して成立しているわけですから…。
ビッグモータ―社は従業員6000人以上を擁する会社です。
その一番上に立っていた方が、合法違法の感覚を飛び越えて、物の道理の判断を大きく誤っていることが、この発言によって明るみになったような気がします。
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