COLUMUN
法律コラム

代表弁護士の水谷です。
世の中で取り沙汰されている時事問題について、法律に関わる部分で解説したいと思います。
連日、ジャニー喜多川氏のジャニーズ所属の男性たちに対する「性加害問題」が報道されています。
日本では長年、噂されていたものの、BBCが2023年3月に“Predator: The Secret Scandal of J-Pop(J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル)”を放送してから、一気に国内でも報道されるようになりました。
日本内部では噂であったものが、海外メディアでドキュメンタリー化されてしまうというのは、いかにも日本らしいところがあります。
社長のわいせつ行為については、1960年ころから50年以上も取りざたされ、ジャニーズ事務所が名誉棄損として週刊文春を訴えた民事裁判の中で、わいせつ行為が真実であると認定された経緯はあったようです(事実が真実でも名誉棄損は成立します)。
故人に対する民事上・刑事上の責任はどうなる?
ジャニー氏は2019年に亡くなっています。刑事的、民事的な責任はどうなるのでしょうか。
刑事的には、今後何等かの事実について被害届が出ても、書類だけ検察庁に送られること(書類送検)はあっても、死者は刑事被告人になれないので、裁判は開始せず、刑事的な処分が科せられることはありません。
民事的には、加害者となったジャニー氏が負っていた損害賠償債務(慰謝料支払義務)は、金銭支払義務であるからその相続人によって引き継がれ、相続人に支払い義務が残ります。
とはいえ、これも相続放棄すればなくなります。また、実際問題としても、加害者本人が亡くなっていたのでは、民事裁判上の証人とならず、事実認定が難しくなるでしょう。
第三者委員会を設置しないジャニーズ事務所
ジャニーズ事務所は、5月現代表取締役社長の藤島ジュリー景子氏が、公式サイトに謝罪動画と文書を発表し、7月にはガバナンス強化のための社外取締役として、ハラスメント対策を専門として取り扱ってきた藤井麻莉弁護士などが就任するそうです。
それにもかかわらず、徹底した事実調査のための第三者委員会を設置することにはしておらず、非難の対象となっています。
それも、刑事上も民事上も、すでに亡くなった社長に対する責任追及は難しくなっていることが一因しているかもしれません。
今後も同じようなことが繰り返されないよう、新たに社外役員となった方々により、真摯に体制整備が進むといいですね。
ジャニー社長が存命であったら…強姦罪か、強制わいせつ罪か
仮に、今もジャニー氏が存命であったとすると、男性が男性に対して性的な加害行為をすることは、どんな罪に問われるのでしょうか。
かつての「強姦罪」は、男性が女性に対して挿入を伴う性行為をする場合のみに適用されていました。そのため、適用されるとすれば、行為の内容を問わず、「強制わいせつ」(6か月以上10年以下の懲役)だけだったことになります。
しかし、強姦罪は2017年に「強制・性交等罪」と改められ、加害者も被害者も男女問わず適用されるようになり、男性の女性に対する挿入でない類似行為も対象となりました。
そのため、男性の男性に対する行為であっても、行為の内容によっては、同じような行為でも、「強制性交等の罪」といして5年以上20年以下の懲役刑のある重い刑が適用されるようになりました。
「不同意性交」の罪の導入
「強制性交」等の罪は、暴行や脅」迫を伴わなくても、恐怖で体が硬直して抵抗できなくなってしまう場合もあるとして、その罪名を「不同意性交」と改め、時効も延長される刑法改正案が、2023年5月、衆議院で可決されています。
男性の男性に対する性的加害行為、女性の男性に対する性的加害行為も、加害者が誰か、被害者が誰かを問わず、またそれがどのような行為であるかを問わず、広く処罰されるようになったといえます。
ただし、憲法上、「遡及処罰の禁止」といって、「実行した時に適法であった場合、その後の法改正で有罪に該当することになったとしても、その法律ができる前にさかのぼって適用することはしない」とされていますから、過去の行為を法改正によって罰することはできないことに注意が必要です。
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