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法律コラム

こんにちは。代表弁護士の水谷です。
初の女性の自民党総裁が誕生し、「働いて、働いて、働いて…」と声を張り上げている一方、前橋の女性市長の男性職員との関係の問題が、ここのところワイドショーを賑わせ、市民からその進退を問われています。
毎日新聞【前橋市長、市職員男性と「10回以上ホテルに」 進退は保留】
プライベートでの出来事とはいえ、公職にある人が、市民からの信頼を問われることは致し方ない側面もあるかもしれません。
では、一般の方ではどうでしょうか。
弊所にも、不貞問題についてのご相談は多くあります。
そんな中で、「会社から懲戒されてしまうかもしれない」「会社から罰してほしい」と言ったお悩みは、多く聞かれるところです。
社外での出来事はあくまでプライベートであるとして、社内での不倫があった場合、会社はこれを理由に懲戒(つまり、降格、減給、解雇などのこと)をすることはできるのでしょうか。
このニュースについて弁護士としての見解をお伝えしたいと思います。
社内恋愛が「解雇理由」になるのか?
今から40年近く前の古い裁判例ですが、ケイエム観光事件(東京地判昭63・5・27労判519・63)というものがあります。
同事件では、バスガイドとの情交関係を理由とする観光バス運転手に対する普通解雇がなんと「有効」とされました。
とはいえ、この事件、30年以上前で、バス会社には女性バスガイドが必須、という社会背景がありました。
これに加えて、バス運転手は40歳を超えていて、バスガイドは10代(!)で、うわさが広まりいづらくなり結果として退職してしまったこと、勤務時間中にも誘う行為があったことなどをとらえて「職場の風紀を乱した」と認定したものです。
これらの事情がない場合、社内恋愛を理由に解雇を有効とする事案は、ほとんど見当たりません。
私生活上のできごとを理由に、懲戒処分や解雇の処分はできない
本来、社内恋愛が民事上の「不貞行為」であっても、あくまで「私生活上の行為」(私生活上の非違行為)である以上、ただちにこれを理由に懲戒処分や解雇の処分をすることはできません。
そのため、単に「社内恋愛や不倫関係があった」というだけでは、会社が懲戒権、解雇権を行使することは原則として許されません。
もっとも、社内不倫が以下の3点に当てはまる場合、懲戒処分や解雇処分が認められることがあります。
①職場の秩序や風紀を乱した場合
②当該行為がパワハラやセクハラに該当する場合
③会社の社会的評価を損なったりした場合
社内恋愛や不倫を理由に処分判断される事情とは
判断のポイントとなるのは、次のような事情でしょう。
- 不倫行為が企業秩序や職場の風紀に与えた具体的な影響
- 当該社員の地位・職務内容(管理職か否か等)
- 不倫によって業務運営に支障が生じたか
- 会社の名誉・信用が毀損されたかどうか
戒告、減給、降格等の処分のみならず、それが普通解雇、懲戒解雇の場合に至る場合は、特に慎重な判断が求められます。
不倫行為の内容に照らして、会社の秩序に影響が出ていない場合、処分が過重であるとして、懲戒権、解雇権の濫用(労働契約法第15、16条)として無効とされるおそれがあります。
ですので、社内恋愛や不倫を理由に「やめさせられるかも」といった懸念は通常はあたりませんし、「やめさせたい」という要望もまた、認められるものではないことがほとんどです
実際には「人事措置」が取られている
とはいえ、実際に業務に支障がないとしても、当事者同士のみならず周囲の働く人への影響がまったくないとはいえないでしょう。
そこで、職場環境の悪化が懸念される場合には、配転・異動などの人事上の措置で対応されていることが一般的かと思います。
懲戒や解雇と違って、配置転換については、使用者の人事権として、裁量が比較的広く認められています。
配置転換命令は、
①業務上の必要性があること
②不当な動機・目的によるものでないこと
労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせないこと
以上の3要件を満たせば有効とされていますので、実際には会社側が当事者の一方を配置転換するなどにより、対処されていることが多いと思います。
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