COLUMUN
法律コラム

弁護士の藤間です。
創業以来、ありがたいことに多くのスタートアップの会社様と共に成長させていただきました。
日々の業務の中では、企業様の内部に深く関与させていただくことも多く、CLO(Chief Legal Officer)として、経営・財務・労務・ガバナンスなど、様々な論点に法的視点から伴走させていただいております。
そうした支援の中で特に感じるのが、企業が成長フェーズに差し掛かる際に直面する「人材育成」という課題です。
このコラムでは、スケールアップを目指す企業が乗り越えるべき“人材育成の壁”について、法務の視点から整理していきます。
従業員が10名を超えると「人材育成の仕組み」が必要に
創業初期は、代表者や初期メンバーの熱意で業務をカバーし、「見て覚える」や「空気を読む」ことで組織が回っていたとしても、従業員数が10名を超えたあたりから、そのやり方が限界を迎える場面が多くなります。
人によって指導の内容や基準が異なることで、成果にバラつきが出たり、成長スピードに差が出たりすることが顕著になります。
経営者自身も、「何を教えるかは現場に任せている」「育成は属人的にやってきた」と語る企業が多いのが実情です。
この段階で必要になるのが、人材育成を仕組みとして捉え直すという視点です。
人材育成の仕組みがないと、行政指導が入ることも<事例紹介>
人材育成を社内の仕組みとして整備するためには、少なくとも次の3つの柱が必要です。
- 職務定義と業務範囲の明確化
- 評価制度の透明性と客観性の確保
- 教育・研修体制の可視化と継続性の担保
これらの制度を整えないまま事業を拡大してしまうと、指導格差や不公平な評価への不満が社内に蓄積し、離職率の上昇や労務トラブルへとつながる可能性があります。
あるEC系企業では、売上急増にともない短期間でアルバイトを30名以上増員しました。
しかし、育成や教育の体制は整備されておらず、現場のリーダーがそれぞれのやり方で指導していた結果、複数のスタッフが精神的ストレスを訴え、うち1名は休職、さらに1名は労基署へ相談。
企業側としては「悪意はなかった」「忙しくて整備が間に合わなかった」と話していましたが、最終的に、指導体制の不備を問われ、行政指導が入る結果となりました。
このようなトラブルは、どの成長企業にも起こり得る問題です。
弁護士が法務視点で整える、4つの人材育成の支援ポイント
人材育成は一見、組織論や人事制度の話に聞こえるかもしれませんが、弁護士の視点で見ると、そこには多くの法的リスクが潜んでいます。
例えば、次のような問題が現実に起こり得ます。
- パワーハラスメントや指導名目での人格否定による精神的損害
- 評価の基準が不明瞭で、昇格・降格に不満を持った社員が労働局へ申告
- 研修記録がないため、指導した側の正当性を主張できない
これらの事例は、経営にとって重大な信頼損失につながるだけでなく、金銭的にも大きな負担を生むことになります。
人材育成を法務の観点から整える際、弁護士としては次のような4つの支援が可能です。
- 就業規則や評価制度の法的整合性をチェック
- OJTや指導記録のテンプレートを整備し、記録保存の運用を提案
- パワハラ対応や内部通報制度の仕組み化
- 教育に関する責任範囲を契約書・社内規定に明文化
これにより、万一のトラブル時にも「適切な運用をしていた」と説明できる体制が整い、法的なリスクを未然に回避することが可能になります。
人材育成は「経営戦略」と「法務リスクマネジメント」
経営者の中には、「育成のことまで弁護士に頼むのか?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、現代の労務トラブルや経営判断のスピード感を考えた時、人材育成というテーマは、もはや「経営戦略」と「法務リスクマネジメント」が重なり合う領域にあります。
実際、制度整備がなされている企業ほど、離職率は低く、現場におけるマネジメントも安定しています。
スタートアップや成長期の企業にとって、「人をどう育てるか」は単なる人事の問題ではなく、組織の未来を左右する重大なテーマです。
仕組みの不備によって法的リスクが生まれる時代だからこそ、弁護士をパートナーに迎え、「人材育成の法務体制」を整えることは、スケールアップの礎となります。
人材を守るだけでなく、伸ばす仕組みづくりを、経営と法務の交差点からご一緒できれば幸いです。
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