「これって離婚できますか?」配偶者が生死不明・強度の精神病の場合 | 法律コラム | 弁護士法人 世田谷用賀法律事務所

 

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2021.10.06 | Vol.155

「これって離婚できますか?」配偶者が生死不明・強度の精神病の場合

【離婚への道】第13回

事裁判を得意としている水谷弁護士によるコラム【離婚への道】。
前回は法律上の離婚事由で5つの規定の中でも、最も問い合わせの多い「不貞」について詳しくお伝えしました。(前回記事はこちら
離婚について、相手と話し合いができないとき。最終的には裁判で離婚を認めてもらって、初めて離婚が可能となります。
民法770条第1項が規定している5つの離婚原因のうち、今回は3号の「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」4号の「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき」について、解説したいと思います。

 

Q. この場合、調停は必要ですか?
A.調停は要りません。この場合、直接家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、離婚することができます。裁判では、3年以上の生死不明を主張する原告が、あらゆる手を尽くして捜索したが、生死が判明しなかったことを証明する必要があります。
なお、離婚判決が出た場合、後に相手方が生きて帰ってきた場合であっても、判決が覆ることはありません。
「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき」とは…
単なる精神病ではなく「強度の精神病」「回復の見込みがない」という2つの条件を満たす必要があります。しかし、「この2点の要件を満たす」と判断する事例は稀なようです。統合失調症で6年間入院した事案について肯定した裁判例がある反面、統合失調症であっても否定された裁判例もあります。
Q. 精神病か、回復の見込みがないかどうかを判断するのは?
A.「強度の精神病」かどうかは医師の判断を必要です。「回復の見込みがない」かどうかは、ある程度の治療期間を見なければ判明しません。生死不明でも3年以上たたないと離婚原因にならないことからしても、回復の見込みを判断するにはかなりの長期間を要すると考えられます。
Q. 強度の精神病が認められない場合は?
A. 配偶者が精神病であるような場合には、裁判所はむしろ5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚を認める傾向にあるようです。
ただし、裁判所は離婚を認めるとしても、それまでの結婚生活の状況、離婚後の生活に対する配慮まで求めています。
Q. 強度でなくてもうつ病や総合失調症の場合は?
A. 逆に同居義務、協力義務、扶助義務に違反するものとして、「悪意の遺棄」を認定されてしまう可能性もあります。精神病の配偶者を誠実に看病するのか、離婚後の生活支援の見通しはたっているのかなど、精神病を患っている配偶者の生活をある程度保証する準備を整えているような状況があって、初めて離婚が認められることになります。
Q. 誰を相手に訴訟するのでしょうか?
A. 相手方が強度の精神病であり、意思能力が欠けている場合には、裁判所に申し立てを行って、精神病の配偶者のために成年後見人を選任してもらい、離婚訴訟を行うことになります。

「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」とは、配偶者からの音信が途絶えてから3年以上経っていて、生死が確認できない場合をいいます。単に所在が不明な場合には3号にあたらず、生存しているか死亡しているか証明できないことをいいます。
実際には、この場合には、相手方に訴状をどうやって送達するかが問題になります。
住所がわかっている場合には「郵便に付する送達」、住所すらわからない場合には「公示送達」となります。(公示送達については裁判所のHPにあるこちらを参照)

 

「強度の精神病で回復の見込みがない」場合とは

「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき」とは、単なる精神病ではなく「強度の精神病」「回復の見込みがない」という2つの条件を満たした場合をいいます。
しかし、「この2点の要件を満たす」と判断する事例はまれ。
「強度の精神病」かどうか、「回復の見込みがない」かどうかは、医師の判断を必要とします。
典型例は統合失調症ですが、統合失調症とはいっても、服薬によって症状をコントロールできている方、発作などが伴い状態が次第に悪化している方など、さまざまな場合がありますので、一概にこれとはいいがたいです。
一方、うつ病、パニック障害など、一見して「強度」で「回復の見込みがない」とまでは言いにくいものについては、このような配偶者を見捨てて離婚を求めることは、逆に同居義務・協力義務・扶助義務に違反するものとして、認められないことにもなりかねません。
このような場合には、離婚後の生活支援の見通しをたてるなど、精神病を患っている配偶者の生活をある程度、保証する準備を整えていることを示して、初めて離婚が認められる余地が生まれます。
なお、相手方が強度の精神病であり、意思能力すら欠けている場合には、裁判所に申し立てを行い、成年後見人を選任してはじめて離婚訴訟を行えることになります。

 

事案としてはまれなパターンだけあって、専門家の見識が必要に

生死不明や強度の精神病は、法律相談としては比較的まれな事案です。
実際このような場合は、財産について「不在者財産管理人」を選任したり、相手方について成年後見人を選任しないと、手続できないことが多くあります。
離婚の中でも難しい事案ではありますが、お悩みの方は一度ご相談されることをおすすめします。
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*この記事は2018年11月の記事を再構成しています

 
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