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法律コラム

4月7日に緊急事態宣言が発令され、状況がまた再び変わりました。前回は、休業されたスポーツクラブの月謝について詳しく言及しましたが、そもそも休業要請という状況は、事業者側にとってどういう状況を引き起こしてしまうのでしょうか?
休業"協力"の"要請"って…なに?
蛇足ですが、日本の法律では、「休業協力要請」にすぎず海外のような「禁止」ではないので、これに違反したとしても刑罰を科されるものではありません。
今でも大学の法学部生は、憲法の授業で「公衆衛生のために私権を制限することが許されるか」のような論点について学びます。普段の生活をしている分には一体何の話だろう…?という感じですが、今がまさに国・地方が、大衆の生命・身体の保全のために個人の経済活動を制限している場合です。
本来なら「経済的な損害の分は国が補填してやらなければならないのではないか」という問題が生じます。
これについて、都は、緊急事態宣言直後、中小企業に最大200万、個人に100万円まで「休業協力」金を支給すると発表しました。あくまで「要請」であって経営権を剥奪しているわけではないので、経済的なロスを全部補填するというのではなく、「休業協力金」を支給しましょう、というわけです。
スポーツクラブをはじめ、事業者側の事情
一方で、事業者側には、事業者側のお財布事情があります。
スポーツジムだけでなく多くの事業者は、引き続きそのテナント料(賃料)を払わなくてはいけません。
私たち弁護士のところへも、賃料減額の要請に関するご相談は増加しています。
従業員の給与についてはどうでしょうか。
店舗自らの自粛のときは、労働基準法26条により、「使用者の都合(責めに帰すべき事由)」で従業員を休業させるときは、6割の休業手当を払わなければならないとされていました。
でも、休業協力対象に入った産業は、もはやオープンすることが「できない」(=不可抗力)のですから、この場合は休業手当を払わなくても違法ではなくなります。
報道によれば、休業協力要請対象かどうかを問わず、客の激減で休業を余儀なくされたものであれば、休業手当を支払わなくても違法ではないとの見解を厚生労働省が示したともされています。
とはいえ、スポーツクラブなどの施設側は、今後も働いてもらいたい従業員であるスタッフに対して「仕事がないから来なくていい。給料は払わない」ということなど容易にはできません。
このことから、従業員の給与支払は、負担として重くのしかかることになります。
以上のとおり、私たち顧客側も、利用できないのだから「当然、お金は払いたくない or 払わなくてよい」と考えますが、一方で、事業者側は「顧客の利用・売上もないのに賃料・給料の支払いは続く」という重い負担を抱えることになります。
そうしますと、100~200万にとどまる都の協力金のレベルではなく、休業によって事業者側が被った損害をすべて国が補填できれば問題ないのでしょうが…、なかなかそのようなことは現実的ではありません。
特に3月・4月の利用料をめぐっては「返還してくれ」という消費者と、「規約上返還できない」とする事業者との対立する事例が、今後、増えてくるかもしれません。
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