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法律コラム

中小企業のM&Aにおける事業価値の「磨き上げ」とは。成功実例とともに紹介
【中小経営者のためのM&A・事業承継講座 vol.3】
弁護士の藤間です。
日々、中小企業さまの事業承継・M&Aに関する法的アドバイスなどをする中で、中小企業の経営者さまに事前に知っておいてほしいM&A・事業継承の基礎知識をシリーズでお伝えします。
前回のコラムでは、事業承継において重要な「見える化」について解説しました。
今回はその次のステップ、「磨き上げ」について詳しくお伝えします。
初めてM&Aや事業承継を検討される経営者の方にもわかりやすいよう、成功した好実例も交えながら丁寧にご紹介します。
事業継承における「磨き上げ」とは
「磨き上げ」とは、中小M&Aガイドライン(第3版)において「見える化」で明らかになった課題を改善し、会社の魅力を高めるための取組とされています。
具体的には、①業績改善、②組織整備、③法務リスクの解消などを行い、第三者にとって「買いたい」と思われる状態をつくることが目的です。
①業績改善で、M&Aが成功した実例
ある製造業の企業では、数年間赤字が続いていましたが、工場の稼働率を分析した結果、休日稼働のコストが非常に高いことがわかりました。
稼働日数を週5日に見直し、取引先との納期交渉も再調整した結果、赤字幅が大幅に縮小。
これにより、買い手候補から「改善の見込みがある会社」として評価され、希望価格でM&Aが成立した事例があります。
業績改善は、難しい戦略変更ではなく、日常的なコストや業務フローの見直しから始めることができます。
サブスクリプション契約の見直し、外注費の整理、棚卸在庫の圧縮など、日々の経費削減も十分に「磨き上げ」として評価されるポイントです。
②組織整備で、M&Aが成功した実例
組織面の整備も極めて重要です。
たとえば経営者の長年の経験で回っている「属人化」した業務があると、買い手は「引き継ぎが難しい」と感じてしまいます。
マニュアルの整備や権限の明確化、管理職の育成などを通じて、組織全体で意思決定・業務遂行が可能な体制をつくることが重要です。
実際に、ある印刷業の会社では、社長がすべての営業判断を一人で行っていましたが、引き継ぎの準備として営業社員に権限を分散し、月次報告の仕組みを導入。
社内での業務の見える化が進んだ結果、後継者不在でも安心して買収できると判断され、成約に至りました。
③法務リスクの解消で、M&Aが成功した実例
弁護士の立場から特に強調したいのが、法務リスクの是正です。
たとえば、契約書が口頭のみであったり、使用している契約書が10年以上前のものであったりすると、買い手から不安視されます。
就業規則が未整備だったり、従業員との雇用契約書が存在しないといった労務管理の不備も、将来的なトラブルの元です。
中小M&Aガイドライン(前掲)では、「法的トラブルの発生リスクはM&A交渉を左右する重大な要因である」と明記されており、表面的な数字よりも法務の健全性が重視される場面も多くなっています。
特に、未払残業代や社会保険未加入、名義株主の存在などは、買い手の立場から見て最も避けたいリスクの一つです。
これらは時間をかけてでも解消しておくべきです。
例えば、以前関与した飲食業のケースでは、従業員との契約書が整備されておらず、休日出勤や残業代に関する取り決めが曖昧でした。
これを機に就業規則を見直し、契約書を整備。
過去の未払分についても支払いスケジュールを合意したことで、買い手の懸念が払拭され、予定通りM&Aが実現しました。
ほかにも、注目されている「磨き上げ」の取り組み
そのほかにも、経営者保証の整理や会社資産と個人資産の分離など、事業と経営者を切り離す作業も磨き上げの一環です。
これにより、M&A後に経営者が退く場合でも、買い手がスムーズに事業を引き継ぐことが可能になります。
加えて、最近では「非財務的価値」にも注目が集まっています。
地域貢献、従業員との信頼関係、サステナビリティへの取組なども企業価値として評価されることがあります。
たとえば、地元の学校と共同で職業体験を実施していたり、長期勤続の従業員が多いといった事実は、買い手にとっては“安心材料”となり得ます。
小さな改善を積み重ねることが、事業継承を成功させる
中小M&Aガイドライン(前掲)では、「見える化と磨き上げを同時並行で進めることがM&A準備を最も効果的にする」とされています。
見た目の数字だけでなく、将来性・信頼性・誠実な経営姿勢も含めて会社全体を整える作業こそが磨き上げです。
磨き上げの取り組みは、一朝一夕ではできません。
小さな改善を積み重ねることで、結果的に買い手との信頼関係が築かれ、満足いく事業承継へとつながります。
弁護士・税理士・会計士などと連携しながら、優先順位を立てて一つ一つ改善に取り組むことが、着実な一歩となるでしょう。
次回は、事業承継における契約実務の流れと注意点について、法律的な視点から解説いたします。
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