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法律コラム

中小企業のM&Aにおける事業価値の「磨き上げ」実践① <弁護士活用による、業績改善編>
【中小経営者のためのM&A・事業承継講座 vol.4】
弁護士の藤間です。
日々、中小企業さまの事業承継・M&Aに関する法的アドバイスなどをする中で、中小企業の経営者さまに事前に知っておいてほしいM&A・事業継承の基礎知識をシリーズでお伝えします。
前回のコラムでは、事業承継を成立に導く「磨き上げ」について解説しました。
この記事では、後継者不在の中小企業が第三者承継(M&A)を目指す際の「磨き上げ」ステップのうち、特に業績改善に焦点を当て、弁護士をどのように活用すれば、承継準備をより円滑かつ戦略的に進められるかについて解説します。
「磨き上げ」で弁護士を使う理由①法的整備と戦略支援を担うため
中小M&Aガイドライン(第3版)では、企業がM&Aの準備段階において「見える化」に続き、「磨き上げ」を行うべきであると示されています。
業績の改善はその中心的なテーマであり、事業の魅力を高める直接的な手段です。
しかし、「業績改善」と一言で言っても、経営者だけでその全てを設計・実行し、さらに買い手に向けて適切に説明するのは容易ではありません。
そこで弁護士の出番です。弁護士は、改善施策の立案・実行に直接関わるわけではないものの、「業績改善を事業承継に活かす」ための法的整備と戦略支援を担います。
たとえば、改善施策に伴う仕入れ先や取引先との契約条件の見直し、価格改定交渉などは、民法・商法・下請法などの法的制約のもとで行う必要があります。
通知義務や既存契約との整合性を軽視すると、改善どころか契約トラブルに発展しかねません。
弁護士があらかじめ契約書の内容を精査し、合意変更の段取りを支援することで、無用な摩擦を回避しつつ改善を進められます。
「磨き上げ」で弁護士を使う理由②業績改善が進んだ後の説明力
また、業績改善が進んだあと、それを「どう説明するか」も極めて重要です。
利益率が向上したとしても、買い手は「持続可能な改善か」「一時的な効果ではないか」を厳しく見ています。
弁護士は、改善の背景にある取組を整理し、適切に文書化することで、開示資料や質問回答書の信頼性を高める役割を果たします。
誇張や誤解を招く表現を避けつつ、プラスの情報を最大限活かす表現調整も、弁護士の守備範囲です。
「磨き上げ」で弁護士を使う理由③M&A直前に労務リスクを防ぐ
改善施策の過程で、労働条件や従業員配置を変更するケースもあります。
たとえば店舗統合や営業時間の変更、職務内容の再定義などは、労働契約法や労働基準法に触れる可能性があります。
こうした変更に対しては、労働条件通知書や同意書の作成、事前の労使協議が不可欠です。
弁護士は、これらを的確に整えることで、M&A直前に労務リスクが噴出する事態を防ぎます。
「磨き上げ」で弁護士を使う理由④ほか士業とチームを連携できる
さらに、改善に伴う取引構造や組織構成の変更が、税務・登記・規制対応を伴う場合には、他士業と連携して全体設計を担うこともあります。
弁護士が中心となって、税理士・会計士・行政書士との連携を図り、「改善によって新たに生じた法的変化」を承継前に整理することで、買い手にとっても“受け取りやすい会社”が出来上がります。
実際に私が関与した案件でも、広告宣伝費を見直し、利益率を改善した飲食業者が、開示資料を誤って“前年比3倍”と表現したために買い手から「操作的な数字では」と疑念を持たれ、交渉が難航した例がありました。
弁護士が介入して、再計算と表現の修正を行い、説明責任を果たした結果、契約直前で信頼を回復し、無事に成約に至ったことがあります。
弁護士を活用することで、承継可能な状態へ
磨き上げによる業績改善は、M&A成功の“入り口”に過ぎません。
その成果を法的に安全な形で裏付け、買い手との信頼構築に転換できるかどうかが、その後のプロセスを大きく左右します。
弁護士を早い段階から活用することで、改善の成果を「数字」だけでなく「説明可能な価値」として仕上げることができ、会社は確実に“承継可能な状態”へと近づいていきます。
次回は、属人化した経営から脱却し、“見える組織”をつくることで会社の承継性を高めるために、弁護士がどのように支援できるかを解説します。
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