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法律コラム

中小企業のM&Aにおける事業価値の「磨き上げ」実践②<見える化組織のための弁護士活用編>
【中小経営者のためのM&A・事業承継講座 vol.5】
弁護士の藤間です。
日々、中小企業さまの事業承継・M&Aに関する法的アドバイスなどをする中で、中小企業の経営者さまに事前に知っておいてほしいM&A・事業継承の基礎知識をシリーズでお伝えします。
前回のコラムでは、「磨き上げ」における弁護士の活用ポイントついて解説しました。
この記事では、事業承継を成功させるために避けて通れない課題である「属人経営からの脱却」と、それに向けた「見える組織」の構築について、弁護士がどのようにサポートできるのかを詳しく解説します。
「属人経営」は、承継の際に大きな障害となる
中小企業における経営者の多くは、長年の実績と信頼で事業を牽引してきた方々です。
しかし、その経験と勘に依拠した「属人経営」は、承継の際に大きな障害となります。
買い手や後継者が最も恐れるのは、「この会社は社長がいなければ回らない」という印象を持たれることです。
実際、中小M&Aガイドライン(第3版)でも、磨き上げのプロセスにおいて「業務や人材の属人性を減らすこと」が重要であると明記されています。
「見える組織」になるための4つの取り組み
では、「見える組織」とは何か。
これは、社長がいなくても業務が自律的に回る体制を指します。
具体的には、以下のような取り組みが求められます。
- 業務マニュアルの整備:業務の流れを可視化し、属人性を排除する
- 権限移譲の体制:意思決定プロセスの明文化、承認フローの整備
- 就業規則・雇用契約の明確化:労務管理を法的に安定化させる
- 評価制度と人事方針の策定:人材マネジメントを個人依存から脱却させる
これらの体制整備は、経営改善の一環であると同時に、法務的な裏付けが必要不可欠な分野でもあります。
ここで弁護士が活躍します。
「見える化組織」のための弁護士活用法①
たとえば、業務マニュアルの整備においては、「従業員の指示命令権限が誰にあるのか」「どの業務が法的に注意を要するのか(契約、個人情報、下請等)」といった点を明確化する必要があります。
これらは、単に現場のヒアリングを行うだけではなく、法律的な観点からのレビューが必要です。
弁護士は、リスクの高い業務に注目しながら、マニュアルに盛り込むべきポイントを助言します。
「見える化組織」のための弁護士活用法②
また、就業規則や雇用契約の整備も、属人性の排除に大きく寄与します。
社長の一存で労働条件が変動していたような環境では、引継ぎ後のトラブルが生じやすいものです。
弁護士は、現在の実態を踏まえたうえで、労働基準法や判例法理に適合した制度設計を行います。
個別契約書のひな形や、業務委託契約との切り分け方針なども、将来の紛争を防ぐ観点から助言が可能です。
「見える化組織」のための弁護士活用事例
たとえば、ある建設系企業では、現場管理者が「社長の長年の右腕」として仕入・発注・価格交渉などを一手に担っていました。
この状態では、社長が退任したあと、誰が意思決定を担うのかが不明確で、買い手も不安を感じていました。
そこで、弁護士が中心となり、発注権限の基準や承認ルートを明文化し、取引先との契約見直しを図ることで、「個人の力に依存しない会社」を構築できました。
このように、弁護士は法的文書の整備だけでなく、組織の透明化と持続可能性の支援者として機能します。
さらに、経営者が「社内で起きていることを体系的に説明できる状態」を作ることも重要です。
これにより、買い手との面談でも、確実な引継ぎと継続性の裏付けを提示できます。
弁護士は「紛争を防ぎ、承継を成功に導く設計者」
属人化を放置すると、M&A直前で想定外のリスクが噴出することもあります。
たとえば、「この人が辞めたら会社が機能しない」と見なされれば、価格が大幅に下がる、あるいはM&Aが破談になることもあり得ます。
弁護士は、こうした人材・組織リスクを事前に察知し、ドキュメントと制度で補うことができる存在です。
組織を可視化し、誰がいつ何をしているのかが把握できる状態をつくる。
それはM&Aの準備としてだけでなく、従業員の安心や生産性の向上にもつながる重要なステップです。
そして、その過程でこそ、弁護士は「紛争を防ぐ」だけでなく、「承継を成功に導く設計者」として活用いただけます。
次回は、「法的リスクの整理と非財務的価値の可視化」をテーマに、弁護士がどのように価値を引き出すサポートができるのかを解説します。
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